志望校を決める上で、大学合格実績は重要な判断材料のひとつでしょう。
今回は、「高校受験の基礎知識」を1回お休みして、公立上位校の進路実績について書きたいと思います。
見ていくのは、公立御三家のうちの2校、県立船橋高校と東葛飾高校です。
実は、県立船橋高校と東葛飾高校では、ホームページに「大学合格者数」だけでなく「進学者数」まで掲載しています。
多くの学校が発表している「大学合格者数」は、「のべ」合格者数であり、1人で3つの大学に合格すると「3名」とカウントされてしまいます。
これでは、実際に「どこの大学」に「何人が」進学しているのか知ることはできません。
両校のように「進学者数」まで発表していれば、この高校から「どこの大学に何人が行けるのか」を、はっきり掴むことができます。
「進学者数」まで発表している学校は非常に少ないので、両校の姿勢は大変評価できるものです。(まさに、進学指導重点校の鏡!)
ここでは、「合格者数」よりも「進学者数」に着目して、両校の進路の実態を見ていきたいと思います。(数字はすべて両校のホームページによります)
◎どこの大学に数多く進学しているのか
まず始めに、「進学者数」の多い大学を見ていきましょう。
県船橋と東葛飾の2桁以上進学者のいる大学を順に挙げてみます。(現役・既卒込みの数字です)
県立船橋高校(2009年度大学進学者数303名、現役210名・既卒93名)
早稲田大学 44名(合格者数100名)
千葉大学 41名(42名)
東京理科大学 22名(91名)
筑波大学 15名(17名)
慶應義塾大学 14名(38名)
明治大学 14名(104名)
立教大学 11名(86名)
県立東葛飾高校(2009年度大学進学者数310名(防衛大学校含む)、現役207名・既卒103名)
早稲田大学 46名(113名)
慶應義塾大学 28名(59名)
千葉大学 27名(30名)
東京理科大学 21名(125名)
筑波大学 19名(19名)
立教大学 16名(83名)
上智大学 12名(37名)
明治大学 12名(94名)
法政大学 10名(71名)
県船橋・東葛飾とも同じような大学が並びました。
特に、早稲田・慶応・千葉・東京理科・筑波の5大学に、多く(県船橋・東葛飾とも進学者の45%が)進学していることがわかります。
県船橋・東葛飾は「難関私大や地元国立大」に多く進学する高校だと言ってよいでしょう。
◎超難関大への進学状況はどうか
では、東京大・一橋大・東京工業大といった「超難関大」への進学数はどうでしょうか。
県船橋高校
東京大 2名
一橋大 7名
東京工業大 8名
合計17名
東京大 5名
一橋大 4名
東京工業大 7名
合計16名
県船橋・東葛飾ともに8クラス編成(県船橋は理数科含む)ですから、「超難関大」に進学するためには「クラスで2・3番」にいなければいけないことになります。
京大・東北大といった旧帝大や、国公立大医学部への進学者を考慮しても、「クラスで5番以内」には、常に入っている必要があるでしょう。
県内では難関校といわれる県船橋・東葛飾でさえ、「超難関大」に進学するのは非常に難しいのです。
まわりの友達と同じような高校生活を送っていては、とても達成できそうもありません。
高校進学段階から超難関大、特に東大を目指しているのなら、県立千葉高(東大27名)か渋谷幕張高(東大28名)に進むべきでしょう。
ちなみに、今年、東葛飾高校で大阪大学に合格しながら進学しなかった生徒がいます。
もったいない話ですが、阪大を蹴って、いったいどこに進学したのでしょうか。
◎国公立大への進学状況はどうか
公立高校は学費の安さも魅力のひとつです。
高校が公立なら、大学も国公立でと考えたくなりますが、国公立への進学率はどうなのでしょうか。
国公立大への進学者数・進学率を見てみると、
県船橋高校 123名(大学進学者数303名、進学率41%)
東葛飾高校 100名(大学進学者数310名、進学率32%)
国公立大への進学率3・4割というのを、「高い」と感じるのか「低い」と感じるのかは人それぞれでしょう。
両校の比較では、国公立志向がより高いのは県船橋だといえそうです。(単年度で判断してしまうのは危険かと思いますが)
これは、地元国立大である千葉大学が、東葛飾高のある柏から遠いこと(松戸にある園芸学部をのぞく)に起因すると思われます。
筑波大学も決して近いとはいえないので、東葛飾には「遠くの国立大より、近くの難関私大」という志向があるのかもしれません。
慶大進学者が県船橋より多いのは、国公立大進学者が少ないことの裏返しでしょう。
もっとも、慶大も決して近いわけではないので、「田舎の国立大より、都会の難関私大」という志向なのかもしれません。
現役と既卒との比較をしてみると、
県船橋高校 現役80名(大学進学者数210名、進学率38%)、既卒43名(大学進学者数93名、進学率46%)
東葛飾高校 現役63名(大学進学者数207名、進学率30%)、既卒37名(大学進学者数103名、進学率36%)
県船橋、東葛飾とも、現役よりも既卒の国公立大進学率が高くなっています。
県船橋では3年間のデータが公表されているので、国公立大進学率の変遷を見てみると、
現役 07年31%、08年34%、09年38%
既卒 07年29%、08年39%、09年46%
既卒の国公立大進学率が急速に上がっているのがわかります。
景気が悪化する中で、「浪人して家計に負担をかけてしまったぶん、大学は国公立に」ということなのかもしれません。
県船橋・東葛飾の進路実績を見てきて、やはり「有名大学への進学は甘くない」ということがわかると思います。
「超難関大」を含め、前出の5大学までに進学するためには、校内で上位50%(浪人込みで)には入っている必要があるでしょう。
しかし、見方を変えれば、明治大・立教大レベルの大学なら、半分以下にいても進学できるということですから、県船橋・東葛飾の実力はたいしたものだとも言えます。
ただ、例えば明治大学の進学率(合格者のうち進学した割合)は、県船橋・東葛飾とも13%と大変低く、両校の生徒にとって明治大は「次善校」や「安全校」にはなっても、積極的に進みたい大学ではないことがわかります。
そう考えると、努力して県船橋や東葛飾に進学したのに、大学は「MARCH(明治・青学・立教・中央・法政)」以下のレベルでは、悔いが残る大学進学になってしまいそうです。
県船橋・東葛飾を目指している受験生は、合格するだけで「楽しい」高校生活が待っていると思ってはいけません。
高校入学後もしっかり勉強して「上位50%以内」を維持する必要があることを、頭に入れておきましょう。
そして、「上位50%以内」に入るということは、特色化選抜の定員がちょうど50%ですから、高校受験では「特色化選抜で合格しよう」ということになります。
「ただ合格すること」だけを目標にせず、「上位50%以内」に入ることを目標に、強い意志を持って頑張ってください。