今回は千葉県私立高入試について解説します。
千葉県内の私立高校は、入試システムの違いで、
1.学力試験の成績で合否が決まる学校
2.中学校の成績をもとに、12月に「入試相談」で合否が決まる学校
の、2種類に分けられます。
1.のタイプの学校は「いわゆる上位校」で10校程度しかありません。
このタイプの学校は、「入試の得点のみ」の勝負で、中学校の成績はほとんど関係ありません。
2.のタイプの学校は「安全校」として使われることの多い学校で、県内私立高校の大半はこのタイプです。
このタイプの学校は、「学校の成績」が基準を満たしていれば、12月の入試相談でほぼ合格が約束されます。
逆に、基準を満たしていなければ、「安全校」としての受験はできなくなります。
ほとんどの受験ガイド本には、入試相談の基準が掲載されています。
自分の成績が「安全校」にしたい学校の基準に達しているかどうか、早めに確認しておきましょう。
入試相談の仕組みなど、入試システムの詳細については、サイドバーの「高校受験に関するQ&A」を見てください。
千葉県では公立第一志望の生徒が多いため、私立高は主に公立高の「併願校」として受験されます。
第一志望の公立高に合格してしまえば、私立高に進学することはありませんから、結果的に、私立には「公立を不合格になった生徒」、または「挑戦したら受かってしまった生徒」が、多く入学してくることになります。(もちろん、単願合格の生徒もいます)
したがって、入学する生徒のレベルは「不合格になった公立高」より低く、「挑戦した生徒が受けるはずだった公立高」より高いレベルになります。
例えば、東邦大東邦の場合、県船橋受験生にとっては「次善校」になりますが、佐倉受験生にとっては「挑戦校」になるので、東邦に入学してくるのは「県船橋を不合格になった生徒」、または「佐倉を受けるつもりだったが、東邦を受けたら受かってしまった生徒」ということになり、入学する生徒のレベルは「県船橋より低く、佐倉より高く」なるわけです。
このように、千葉県の私立高のレベルは、公立高の間を埋めるような形になっています。
「さくら進学クリニック」では、「公立1番手校」「私立1番手校」「公立2番手校」「私立2番手校」「公立3番手校」・・・というように(勝手に)レベル分けして呼んでいます。
「公立1番手校」は、県千葉・県船橋・東葛飾の公立御三家、さらに千葉東も入れてよいでしょう。
「私立1番手校」は、渋谷幕張・東邦・市川・昭和秀英の4校です。
「私立1番手校」の難易度は高値安定になっていて、県船橋や東葛飾の受験生が合格を確保するのは、周到な作戦がないと難しくなってきています。
特に渋谷幕張・市川の2校は、県千葉レベルでないと「次善校」として成り立たない状況です。
かつて、「県船橋に受かる実力があれば、市川にはまず落ちない」という時代がありましたが、最近では、県船橋合格者のうち、市川にも合格できたのは半数にも満たないでしょう。(データの裏付けはありませんが)
県船橋より市川・東邦の方が偏差値が高いのは「ウソ」ではないのです。
特に、保護者の方には、私立高の難易度の「変わりよう」を十分に理解してほしいと思います。
それでも、現状では「公立1番手校」と「私立1番手校」の両方に合格した場合、ほとんどが公立に進学していると思われるので(もちろん、私立に進学する場合、公立は受けませんが)、「私立1番手校」は「公立1番手校」の下のレベルになるわけです。
現実には、「公立1番手校」の受験生でも、「私立1番手校」を受けない人も多いでしょう。
「受かっても(公立に受かれば)進学しない」にもかかわらず、「合格するのは難しい」とくれば、初めから受けないでおこうと思っても不思議ではありません。
しかし、個人的には、次の2点のために受験することを勧めます。
ひとつは、「私立1番手校」を受験しないと、もしも公立に不合格になった場合、「私立2番手校」に進学しなくてはならなくなること。
その場合、「公立1→私立1→公立2→私立2」と、第一志望だった「公立1番手校」から3段階も下のレベルに進学することになります。
これでは、かなり不本意な進学になるでしょう。
例えば、今年の早稲田大の合格者数だけをみても、県船橋が122名なのに対し、地理的に、県船橋との併願者が多いと思われる「私立2番手校」の日大習志野は20名と、比較の対象になりません。(合格者数は、すべて各校HPより)
「私立1番手校」の東邦(これも地理的に)なら93名ですから、さほど遜色はないでしょう。
そんなこと言われても「受からなきゃ意味がない」と反論されそうですが、逆に、「受けなければ」受からないのです。
また、「受からない」ことにも価値はあります。
特色化選抜が導入されてから、公立上位校は「公立としては不適切」なほどの高倍率になるようになりました。
どんなに実力があっても、1回目の選抜(今年は前期選抜)に不合格になる可能性は少なからずあります。
多くの受験生にとって、公立は第一志望校ですから、不合格になった場合は(個人差はあれど)ショックを受けることでしょう。
しかし今年は、前期発表の翌日(と翌々日)に後期の願書提出があります。
第一志望校を不合格になって「ショックを受けている」場合ではないのです。
ショックを受けて弱気になった結果、志望校を変更してしまっては、後になって悔やむ可能性が高いでしょう。
公立前期が初めての不合格ならば、ショックを受けて当然です。
私立高入試で不合格の体験をしておけば、多少なりともショックをやわらげることができるでしょう。
(もちろん、私立も公立も受かれば、それが一番良いのですが。)
公立上位校の受験生は、何回もの不合格を乗り越えて、第一志望の合格を勝ち取っていかなくてはいけません。
「落ちるかもしれないから、止めておく」というような姿勢では、初めから負けているようなものです。
「可能性があるなら、受けてみよう」という姿勢を持ちたいものです。
もうひとつは、「公立1番手校」は入学後の勉強も楽ではないということです。
高校は、あくまでも通過点です。
その先にある大学受験で、志望校に合格できなければ意味がありません。
その大学受験の勉強は、高校に入学した時点から始まっています。
「公立1番手校」は最上位グループですから、開成・早慶付属・国立大付属など超難関校を受験した生徒が(少数でしょうが)存在します。
そういう生徒たちは、レベルの高い受験勉強を経験してきています。
「公立1番手校」に受かることだけを目標に公立レベルの勉強をしてきた生徒が、超難関校を受験してきた生徒に、まともに太刀打ちできるとは思えません。
気のゆるむ入学直後に、すでに大きな実力差があっては、「気づいたときには、落ちこぼれていた」なんてことにもなりかねないでしょう。
上位校を狙う受験生は、受験のためだけに勉強してはいけないのです。
しかし、目標もなく勉強するのも難しいものです、そこで「私立1番手校」を受験しようということです。
市川・東邦レベルの勉強では、超難関校レベルの勉強をしてきた人と「対等」とはいかないでしょうが、少なくとも「公立1番手校」だけを目標にしてきた生徒には差をつけることが出来るでしょう。
もちろん、1度でも不合格をもらうと「もうだめだ」と弱気になってしまう人もいるでしょう。
(そんな人は、上位校受験には向かないと思いますが。)
個人個人、性格の違いなどもあるでしょうから、全員に「絶対にそうしなさい」とは言いません。
しかし、先のことを考えれば、中学生のうちに出来ることは、できる限りしておきたいものです。
「公立2番手校」は、佐倉・薬園台・県柏・市立千葉など、「公立御三家に準ずる」学校です。
(県柏は、3番手校で出てくる八千代より下ではないのかと言われそうですが、地理的に東葛飾に準ずる学校として入れています。)
「公立2番手校」の受験生が「私立1番手校」に挑戦しても、「非常に(絶望的に)」厳しい状況なので、「公立2番手校」志望者の併願作戦は、悩むことが少ないといえるかもしれません。
「私立2番手校」は、芝浦工大柏・専修大松戸・日大習志野の大学付属3校です。次点で成田、国府台女子学院を入れてもよいでしょう。
「私立2番手校」は、地理的に離れているので、大学付属3校の全てが通いやすいという地域は限られています。
そういう意味では、選択の余地は少なく、距離とレベルで自動的に決まってしまうでしょう。(県柏志望なら芝柏か専松、佐倉志望なら日習か成田といったように。)
国府台女子は前期は「入試相談あり」なので、厳密には「私立2番手校」には入りません。
(ただ、学校側は入試相談はしても、合否は試験重視と言っています。)
「公立3番手校」は、八千代・船橋東・市立稲毛・幕張総合・小金・その他の上位校ということになります。
「公立3番手校」の受験生は、「私立2番手校」に挑戦しても、それなりに可能性がありますから、ぜひ選択のひとつに入れておきたいものです。
「私立2番手校」の易しくない過去問に取り組んでみるだけでも、「公立と安全校だけ」の生徒には差をつけられるでしょう。
「私立3番手校」は、入試相談のある学校です。
入試相談のある学校は「安全校」として使われることが多いので、学校選びは中学校の先生主導になるでしょう。
「私立3番手校」でも、八千代松陰の第3志望など、必要とされる成績がかなり高い学校もあります。
早めに基準を調べておき、基準を下回らないよう学校の勉強も頑張りましょう。
(9科での成績を参考にする学校の場合、実技教科も要注意です。)
長くなってしまったので、学校ごとの概要は次回にまとめます。
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