この春、中3生になったのをきっかけに、塾に通い始めた人も多いと思います。
そこで、今回は「上位校受験と進学塾」について書いていきます。
(今回の記事は現中3生より、中1・2生に向けたものになるかもしれません。)
私は、この「さくら進学クリニック」というブログを何年もやっていますが、基本的には「塾に通っていないこと」を前提にアドバイスを書いています。
それは、上位校受験に「塾が必須」であるとは思っていないからです。
しかし、「塾が不必要」だとも思っていません。
今の進学塾は、親御さんの世代とは大きく変わっていて、そのノウハウは相当なものです。
使いようによっては、大変な力強い味方になると思います。
そこで今回は、私なりに、「上位校受験生」にとっての「塾の利点と弊害」を整理しながら、
「どういう生徒は、塾に行く必要がないのか。」
「どういう生徒は、塾に行くと効果が上がるのか。」
を、考えてみたいと思います。
(塾については、人それぞれ、様々な意見があると思います。あくまでも私個人の意見だと受け取ってください。)
・塾の利点
「塾の利点」なんて、今さら言うまでもない、「わかりやすく、勉強を教えてくれることだろう」と、おっしゃるかもしれません。
それは確かにその通りです。
塾は受験勉強のプロですから、受験に出ることがらを「わかりやすく、的確に、出題される形式で」教えてくれます。
しかし、上位校を目指す受験生は、基礎がわからずに困っているわけではないでしょう。
塾の授業が、楽しかろうが、つまらなかろうが、わかりやすかろうが、わかりにくかろうが、上位校を目指す受験生には、たいした問題ではないのです。(わかりにくいのは困りますが)
多少わかりにくかったとしても、先生の言っていることは、数をこなせば「おのずと」わかってくるものです。
上位校を目指す受験生にとって大切なことは、その「数をこなす」ための指示をもらってくることです。
たとえ、先生の教え方が上手でも、塾で勉強している時間はせいぜい週に6時間ぐらいです。(中3生の通塾は、普通、2時間×3回程度でしょう)
週に「たった6時間」の受験勉強では、とても上位校には合格できません。
塾に行っていても、いなくても、受験勉強のほとんどは「自分一人で」することになります。
したがって、「一人でする勉強」の中身しだいで、志望校に合格できるか否かが変わってきます。
ところが、初めて受験を経験する受験生には、
苦手科目・分野は、いつ、どのように克服していけばよいのか。
どんな問題集を使えば効果が上がるのか、どの程度やり込めばよいのか。
過去問は、いつから、何校分を、何年分やればよいのか、また、解き直しは、どこまでやればよいのか。
まったく何もわからないはずです。
受験生本人に、「実力や時期に応じて」「効果的な」学習計画を作り上げろと言っても無理な話です。
上位校に向けた受験勉強は、勉強すること「そのもの」よりも、「どう勉強するか決める」ほうが難しいのです。
しかし、塾に通っている生徒は、何も考えずに塾のカリキュラムに従って勉強していれば、受験までに一通りの勉強ができるようになっているはずです。
受験から逆算して組まれたカリキュラムは、その時々に必要な学習指示を与えてくれるでしょう。
さらに、塾の先生から、自分の志望校や得意・不得意に応じたアドバイスをもらえば、勉強法で悩むことはほとんど無くなります。
しかも、塾の授業とリンクした指示がもらえるはずですから、「授業と家庭学習」の相乗効果が期待できます。
つまり、「あとは勉強するだけ」という状態になれるわけです。
上位校を目指す受験生にとって、塾の最大の「利点」は「カリキュラム」と「学習指示」にあるといえるのです。
ただし、その利点を生かすためには、家庭学習まで「塾の言う通り」にする必要があります。
受験勉強の中身を「何から何まで塾に任せる」つもりがないと、塾に通う価値を生かしきることは出来ません。
塾の勉強と、家庭での勉強が、しっかりリンクしていなければ、効果は半減どころか相殺してしまうでしょう。
塾に行くからには、塾の先生を信頼してついていきましょう。
もちろん、塾ならではの「詳しい受験情報」も利点のひとつです。
最近は、インターネットでかなりの情報が収集できますが、塾でないと知ることのできない内部情報もあるはずです。
十分な情報をもとに進路相談してもらえることは、大変心強いでしょう。
また、受験生本人に対しての情報提供も「動機付け」という意味で効果大です。
近年は中学校の進路指導の出足が遅いため、なかなか「その気」にならない中3生が多くなっています。
上位校を目指している受験生でも、この時期は、まだ明確な志望校を持っていなかったりするのです。
塾で受験情報を「これでもか」と与えてくれると、受験生も志望を絞り込みやすくなるでしょう。
(最終的には、本人がその気になってくれなければ、どうしようもありませんから。)
・塾の弊害
「塾の弊害」というより「難点」は「経済的負担」が大きいということでしょう。
大手進学塾の場合、中3の1年間だけで数十万円が飛んでしまいます。
誰もが経験する高校受験が「金しだい」というのは、何ともやりきれないように思います。
しかし、経済的なことは「家庭の問題」であって、受験生本人に対する弊害ではありません。
塾の最大の「弊害」は「利点」と表裏一体、「自分自身で学習計画を立てられなくなってしまう」ことです。
前出のように、塾の利点を生かすためには、受験勉強の「全て」を塾にゆだねる必要があります。
それによって、学習効果は最大限に発揮できますが、自身の「学習計画立案能力」は失われてしまいます。
高校受験は塾に助けてもらっても、高校入学後は自分一人で勉強していかなければなりません。
上位校の授業は、予習が必須です。(もちろん復習も必要です)
自分一人で家庭学習を進めていけなければ、早晩、落ちこぼれてしまうでしょう。
最近は、大手進学塾でも、定期考査対策まで「手取り足取り」やってくれるようですから、そういう勉強に慣れきってしまうと、高校進学後に苦労してしまう可能性が高くなります。
「手取り足取り」やってもらって成績が上がっても(高校に合格しても)、「一人で勉強する能力」は向上しないので、塾を辞めたら元通りです。
成績を維持するためには「(高校入学後も)塾に通い続け」なくてはなりません。
「自身で計画立てて勉強する能力」は、社会に出てからも必要な力ですから、全て塾に頼って学歴を獲得したとしても、大切なものを身につけずに学校を出たことになるでしょう。
中学時代に「自分自身で試験の準備をし、成果を出していく」という経験をすることは、非常に大切なことなのです。
・塾が「必要ない生徒」と「効果の出る生徒」
結局、塾の利点は「効率が上がる」ことです。
あなたが、運動部や吹奏楽部など「時間と体力を必要とする」部活動をしているなら、時間効率の高い受験勉強をしないと部活との両立は難しいでしょう。
その場合、経済的に許すならば、塾に通うことで両立がしやすくなると思います。
そして、あなたが塾に入るまでに、「一人で勉強する能力」を身に付けているなら安心です。
部活で顧問の先生についていくように、受験勉強では塾の先生についていけば、少ない時間と労力で成果を出せるでしょう。
もしも、塾に入るまでに「一人で勉強する習慣」を身に付けていないなら、定期考査の勉強くらいは、塾を頼らずに自分で計画してやってみましょう。
あなたが、時間と体力に余裕があるのなら、必ずしも塾に通う必要はないと思います。
自分で試行錯誤しながら、受験勉強を組み立てていきましょう。
時間に余裕があれば、多少の遠回りをしても構わないのです。
遠回りも、あなたに大切な力になっていきます。(もちろん、勉強時間が長くなることは覚悟しましょう)
公立高入試では特色化選抜が昨年で終了し、今年からは前期でも共通問題になります。
昨年までのように、出題レベルがコロコロ変わる独自問題に悩まされる可能性が低くなりますから、一般入試レベルの訓練を積み上げていけば合格が見えてきます。
(とは言っても、普通は公立しか受験しないわけではないので、過去問を始める秋までには私立レベルの訓練も必要になりますが。)
もちろん、前期には独自問題が残る可能性はありますが、共通問題があるので、昨年までより比率は下がるはずです。
(この2・3年で共通問題が難しくなっているので、特色化選抜で独自問題の導入が遅かった東葛飾や佐倉などは、「共通問題で十分判定できる」と、独自問題をやりたがらないのではないかと思うのですが・・・私の勝手な想像です。)
何から手をつけたらよいか困るようなら、通信添削をペースメーカーとして使うのもよいでしょう。
一人で勉強していて、わからない問題が出てきたなら、学校の先生に質問しましょう。
(ついでに、効率の良い勉強法も聞いてしまいましょう。)
塾に通っていない場合、頼みの綱は学校の先生になります、学校の先生(どの科目も)とは出来る限り仲良くしておきましょう。
ただし、あなたの志望校が県千葉であるならば、塾に行った方が勉強しやすいと思います。
県千葉は県内最上位校ですから、受験生も中学校でトップクラスでしょう。
特に学年1位だったりすると、「どこまでの力が必要」なのか、比較の対象が無く目標を見失いがちです。
中学校の先生も、県千葉の受験に関しては「後ろ向き」な方が多く、建設的なアドバイスはもらえなかったりします。
(中学校単位では過去の事例が少ないのと(先生個人だともっと少ない)、学年トップといっても年によって実力がまちまちなので、中学校の授業レベルでは判断がしにくいのでしょう。)
学校の先生に県千葉志望だと伝えて、「君なら大丈夫、頑張れ!」などと言われた生徒など聞いたことがありません。
たいがいは、県船橋や千葉東、場合によっては佐倉・薬園台レベルを勧められてしまうこともあります。
学校の先生にそう言われてしまっては、ただでさえ「どこまでの力が必要なのか」わからない受験生本人は不安になってしまうでしょう。
塾に通っていれば、同じような境遇(県千葉志望)の受験生が多数いるはずですから(多数いる塾に入りましょう)、身近に比較の対象を作ることができます。(やはり競争には、ライバルが必要です)
そして、塾の先生には、学習法と合格可能性について的確なアドバイスがもらえるでしょうから、安心して勉強に打ち込むことができます。(学校の先生に「無理」と言われても、反論する根拠が得られます)
ただし、塾は学校とは反対に「上」を目指させる傾向があるので、漠然と「大丈夫」(精神論)だけでなく、具体的な数字を示してもらいましょう。
いろいろ書いてきましたが、塾は所詮は「道具」に過ぎません。
塾に「行く」か「行かない」かということは、例えば、古タオルでぞうきんを作るのに、「ミシンを使う」か「手縫い」で作るか程度の違いでしかありません。
ミシンを使えば作業効率は上がりますがが、ミシンを買うにはお金が必要です。
また、ミシンを買うお金があっても、あえて「手縫い」する人もいるでしょう。
道具を使うか使わないかは、本人やご家庭の考え方次第だと思います。
受験生になったからと安易に塾に走らずに、「何を求めて塾に行くのか」という部分を明確にしてから、入塾を考えると後悔することは少ないのではないかと思います。
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