私が更新をサボっている間に、10月も下旬、秋の三者面談の時期になってしまいました。
受験生にとっては、この三者面談で受験校がほぼ決まることになります。
そんな大切な三者面談を、上手く乗り切るための注意事項を挙げることにします。
(今回のコラムは、昨年までのものに加筆・修正しています。)
・三者面談の目的
なぜ10・11月に三者面談があるのでしょう。
それは、12月中旬に私立高校の入試相談があるからです。
県内の私立高校には「学力試験で合否を決める学校」と「入試相談で(中学校の成績で)合否をほぼ決める学校」の2種類があり、大半の学校は後者に属しています。
つまり、一部の上位校を除くと、私立高入試は12月中旬の段階で大勢が決してしまうのです。
そのため、中学校では12月中旬の入試相談までに、「どの生徒」が「どの私立高校」を受験するのか、はっきりさせておく必要があります。
中学校の進路指導では、「安全校」において入試相談のある学校を強く薦められます。(というより、入試相談のない学校は、「安全校」として認めてくれないことが多いでしょう。)
入試相談でOKをもらえれば、ほぼ合格が内定されますから、受験生・先生とも安心です。
結果として、ほとんどの生徒が入試相談を利用しているのが現状でしょう。
秋の三者面談では「安全校を決めること」が最大の目的なわけです。
ただ、中学校の先生にしてみれば、どうせ面談をやるなら、すべての受験校を確定させておいたほうが手間が省けるので、「ここで受験校はすべて決定して下さい。」というような言い方をするわけなのです。
・受験生側と先生側の意識の差
三者面談では、受験生と中学校の先生との間に意識の差が見られがちです。
先生は先生の立場で進路指導をしなくてはならないので、どうしても譲らないこともあるでしょう。
先生側の考えをあらかじめ知っておけば、その対策も立てやすくなるはずです。
先生の第一の目標は、「一人の脱落者もなく、クラス全員がどこかの高校に合格すること。」です。
「合格する」という意味では、先生と生徒の希望は一致しています。
しかし、生徒の希望は「志望校に合格する」ことであり、先生の希望は「どこでもいいから合格する」ことなので、質的に大きな隔たりがあります。
したがって、先生は本人の希望よりも、「いかに合格しやすいか」という点を重視して進路指導をしてきます。
その意味では、前出の「入試相談のある学校」を薦めるのは当然でしょう。
第二の目標は「いかに受験する学校数を減らさせるか。」です。
中学校の先生は、自分のクラスの生徒が受験する学校の数だけ、内申書を用意しなくてはなりません。
私立高校の提出書類は学校ごとに仕様がバラバラで、予備の用紙があるわけでもないので、大変気を使って作成にあたらなくてはなりません。(最近は「公立と同じ様式でよい」という学校も増えてきていますので、以前ほど負担ではなくなっているかもしれませんが。)
これを、短期間に大量に用意しなければならないわけですから、先生たちの苦労は並々ならぬものがあると思います。
先生にとってみれば、生徒1人が受験校を1校減らしてくれれば、クラス全体で40枚も内申書を減らせるわけですから、何とか受験校を減らそうと必死に説得してきます。
受験校を減らすという意味でも、「入試相談のある学校」を受けさせることは、大変意味のあることになります。
「学力試験で合否を決める学校」では、「安全校」としては不安が残りますから、「より確実にもう1校」となりますが、「相談のある学校」ならば、その1校だけで押さえは十分ということになります。
また多くの高校では「第二志望」という形の相談もしていますので、「ここを押さえに受けるなら、あとは公立1校しか受けられませんよ。」などという誘導も可能になります。
中学校の先生にとっては、いかに「入試相談のある学校」を受けるように指導するかが、三者面談における最大のポイントといえるでしょう。
ここで、先生の二つの目標を、同時に達成できる方法があります。
それは私立高校の「専願(単願)」です。
専願でも学力試験のある上位校を除くと、大半の高校では、入試相談で話が通れば、そこで(事実上)入試を終わらせることができます。(しかも、「併願」よりも低い基準でOKです。)
もちろん、受験するのはその学校のみということになります。
専願で受験することで、有利に入試を終えることができる生徒の場合はよいのですが、上位校志望の生徒の場合は注意が必要です。
「専願」で内定がもらえる学校は、自分の本来の志望より低いレベルの学校である場合が多いのです。(入試相談のある学校は、上位校受験生にとっては、本来「安全校」ですから。)
安易に飛びついて決めてしまわずに、自分はその高校に進学することで「本当に満足なのか」よく考え、塾などに通っているなら、そちらでも相談してみるのも良いと思います。(特に、通知表の成績の良い生徒は、先生が「専願」を薦めてくることがあるので気をつけましょう。)
・三者面談を成功させるために
ここまで、学校の先生がまるで敵であるかのようなことばかり書いてきましたが、ほとんどの先生はあなたの味方です。
しかし、あなたが自分の希望をはっきりと言えなければ、先生は先生の思惑で、高校をすすめてくるということなのです。
大切なことは、「自分はどこの高校に行きたいのか、はっきりと伝えること」です。
その際、先生にとっての最大の関心事は「安全校」ですから、第一志望の学校だけでなく安全校にしたい私立高校も、「必ず」合わせて伝える必要があります。
できれば、公立・私立とも受験したい学校をすべて挙げて(いわゆる併願パターンですね)、先生の意見を聞きましょう。
また、私立は前期・後期を通しての併願作戦を先生に伝えましょう。
前期試験が終わると、すぐに後期の願書提出・試験と続きます。
学校によっては、前期試験が始まる前に、後期試験の願書も用意しておかなくてはなりません。(成田のように、前期試験が始まる前に後期の締め切りがある学校もあります。)
前期の結果がどうだったら後期をどうするという具合に、先生に「詳細に」話を通しておく必要があります。
受験したい学校名だけを伝えても、先生は都合よく「前期だけで終わりかな」ぐらいに受けとってしまう可能性があります。
後期も受けるつもりなら「前期がだめなら、後期も受けます。」と、はっきり伝えるようにしましょう。
「安全校」については、前出のように入試相談が絡みます。
「入試相談の基準」と「現時点での成績」をもとに、先生がアドバイスするはずなので、先生の薦める学校の中から選択するのが良いでしょう。
その上で第一志望の学校については、自分の気持ちを強く伝えましょう。
特に、公立高校が第一志望なら、一般入試の願書を出すのは2月ですから、現状で合格ラインにとどいている必要は、必ずしもありません。
冬休みいっぱいくらいまでは志望を下げずに、頑張れるだけ頑張るくらいのほうが、実力アップもできるでしょう。
その場合、遅くとも冬休み明けには最終判断をし、無理そうなら志望を下げることを約束して、先生に理解を求めてください。
公立の一般入試では入試問題の性格上、受験生の実力がほぼそのまま出ます。(もちろん試験ですから、予想外の結果になることもありますが。)
実力が足りないのに無謀な挑戦をしても、良い結果が得られることはほとんどありませんし、奇跡で合格しても、入学後、確実に苦労するでしょう。
最終的には、実力相応の学校を受験するのがベストだと思います。
多くの中学生にとって、高校受験は、自分自身の意志で決める「人生最初の選択」でしょう。
つまり、受験する高校が決まるということは、「人生の第1歩を自分の足で踏み出した」ことになるのです。
それだけの重みを噛み締めて、よくよく考えて、話し合って、三者面談に臨んでください。