こんにちは、さくらです。
前回は問題の難易度から、今後の受験勉強の進め方について考えました。
今回は得点分布グラフから、教科ごとの勉強のバランスについて考えたいと思います。
公立の入試問題は教科書をベースに作られていて、しかも全校同一問題のため、上位生にとっては易しい問題だと言えます。
しかし、得点のしやすさは教科によって異なっていて、80点を取るのも難しい教科もあります。
そういった教科ごとの特徴をとらえて、今後の受験勉強に活かしていこうというのが今回のコラムの目的です。
ところで、公立上位校では入試で高得点が必要なので、直前期の対策は全教科まんべんなくが原則です。
特定の教科に絞って勉強して高得点を取っても、他の教科で得点できなければ合計で合格点に届かないからです。
したがって、今回のコラムを見て「公立は理科・社会だ」と、理科と社会ばかり勉強しても思うような成果は得られません。
基本は全教科まんべんなくですが、得点源の教科に穴があるならしっかりケアしておこうという趣旨だと思ってください。
千葉県の公立高校入試は、2021年に前期・後期の2回入試から1回のみの入試に変わりました。
制度変更による不安を軽減しようとしたのか、21年は前年前期より平均点が24.6点上がり少し易しくなりました。
新制度2年目の22年は一転して問題が難しくなり、5教科すべて平均点が下がりました。
そして3年目の23年は英数国の3教科すべてで平均点が50点を割り込み、受験生には厳しい試験になったと思います。
5教科合計では平均点がさらに9点下がり257.7点と260点を割りました。
昨年のコラムには「ここ数年間の得点幅(だいたい260~290点)の下限付近なので、来年はやや易しくなることが予想されます。」と書きました。
結果、2024年は5教科平均点が17.6点も上がって275.3点に、県教委のやることはわかりやすい(笑)。
ここ数年間の得点幅の中間付近なので、2024年の問題が「県の意図する標準的な難易度」だと言ってよいでしょう。
そう考えると、2024年の問題の分析は今後の公立入試問題を占う上での基準となりそうです。
2021年 → 2022年 → 2023年 → 2024年の平均点の推移
国語 52.8 → 47.7 → 47.9 → 50.4(国語はここ数年あまり変化なしです)
社会 57.7 → 56.3 → 54.5 → 57.5(社会は昨年少し難しかったのが戻りました)
数学 59.3 → 51.5 → 47.0 → 51.9(数学は易しかった21年から50点前後に戻しています)
理科 54.6 → 52.7 → 60.7 → 59.1(理科は2年連続で易しいので来年が怖いです)
英語 61.7 → 58.7 → 47.6 → 56.4(英語は昨年難しかったのが戻りました…って社会とほぼ同じ(笑))
5科 286.2 → 266.7 → 257.7 → 275.3(5科合計は260点~290点の間で動いていると考えてよいでしょう)
前々回のコラムでも使用した「令和6年度 千葉県公立高等学校入学者選抜 学力検査結果の概要」を題材として使用します。
この中で今回使用するのは「Ⅳ 【本検査】受検者の得点分布」という簡単なグラフです。
これは得点10点刻みに受検者の人数比率をグラフ化したものです。
グラフの点は10点刻みの中間にありますが、これは70点台や80点台という意味だと解釈しています。(中学校の数学で習う「階級値」ですね)
「正答率30%以上の基本問題」と「正答率7.5%未満の難問」については、前々回のコラムで取り上げたものです。
ではさっそく、2024年の公立入試について、得点分布グラフから教科別特徴を読み取っていきます。
まずは国語から得点分布グラフを見てみましょう。
%は私が目分量で読んだ数字です、正確な数値ではありませんのでご了承ください。
80点以上には90点以上を、70点以上には80点以上を含みます。
正答率30%以上の基本問題 73点
正答率7.5%未満の難問 10点(記述2問、△も入れると10%を超えるので実質的なしと考えてもよい)
90点台の点はx軸のわずかに上、ほぼ0%といってよいでしょう。
80点以上でも3%しかいません。
難問は少ないものの、時間が足りなくなる教科なので、なかなか高得点は難しいのが国語です。
前々回のコラムで書きましたが、県千葉・県船橋・東葛飾の受験者合計が全志願者の約4.3%、千葉東まで入れて5.5%、1・2番手校の8校で11.1%です。
80点以上が3%しかいないので、御三家でも80点に届かなかった生徒がいたでしょう。
逆に70点以上は12%もいるので、上位校では70点台がゴロゴロいてあまり差がつかなかったかもしれません。
次に数学です。
正答率30%以上の基本問題 72点
正答率7.5%未満の難問 14点(大問3の最後と大問4の(2)(3)の4問)
昨年は90点以上1%、80点以上4.5%だったので、今年は少し取りやすくなった印象です。
それでも90点以上は2%に満たないので、容易に高得点は取れない教科という状況は変わりありません。
ただ、80点以上は8%もいるので、2番手校でも「数学は意外に取れた」という生徒が多かったでしょう。
難問が多めの教科なので、基本・標準レベルを取りこぼさないようしっかり訓練しましょう。
続いて英語です。
正答率30%以上の基本問題 91点
正答率7.5%未満の難問 5点(英作文1問、△も入れると22.9%なので実質的なしと考えてもよい)
昨年は平均点が50点を割りこみましたが、今年は例年並みの難易度に戻っています。
90点以上が8%もいるので、1番手校では90点未満の生徒はほぼいなかったでしょう。
(基本問題が91点もあるので、当然と言えば当然なのですが)
英語は上位校ではみんな高得点なので、得意でも差をつけるのが難しい教科です。
逆に言えば英語で高得点が取れないようだと、非常に不利になります。
もし英語が苦手なら、この冬休みに死ぬ気で英語を頑張りましょう。
次は理科です。
正答率30%以上の基本問題 90点
正答率7.5%未満の難問 3点(1問)
90点以上は4%と多いというほどではありませんが、80点以上は16%もいるので取りやすい教科だと言えるでしょう。
もっとも、正答率30%以上の基本問題が90点もあるのに、90点以上は4%しかいないというのは、基本でポロポロ落とす生徒が少なくないことを示しています。
基本問題が多いと甘く見ないで、しっかり訓練を積み重ねておきましょう。
ちなみに理科はときどきすごく易しくなったり、難しくなったりすることがあります。
千葉の理科はそういうものだと思っておきましょう。
最後に社会です。
正答率30%以上の基本問題 86点
正答率7.5%未満の難問 0点
英語とほぼ同じようです。
基本問題が多く、難問がほとんどない、典型的な得点を稼ぐための教科と言ってよいでしょう。
理科と社会は暗記中心の教科なので、練習次第で高得点が可能です。
ただし、みんな高得点の英語に比べると、やや訓練度の差が出ます。
できる人はすごくできるけど、得点の高くない人もそれなりにいる、それが理科と社会です。
(ほぼ中学3年間の知識量で済む英語に対して、6・7歳から蓄積のある理社は奥が深いのです)
入試ギリギリまで繰り返し問題演習して鍛え続けましょう。
5科合計も見ておきましょう。
450点台の点はx軸の少し上、1%未満のごく少数しか存在していません。
400点以上は9%もいるので、1番手校では420~450くらいの間にぎっしり集まっていたと考えられます。
合否のボーダー付近に多数の生徒が集まっているので、1問に泣いた受験生も少なくないでしょう。
公立上位校では取れたはずの1問・2問の失点が合否の分かれ目になります。
その意味で漢字・英単語・計算といった基礎訓練や、暗記中心の教科の反復練習が大切です。
ただし、できる問題ばかり繰り返し練習していると、考える問題が解けなくなります(頭が悪くなります)。
考える問題が多く出題される私立入試が先にあるので、冬休みはそのあたりのバランスも考えて勉強を組み立てましょう。