さくら進学クリニック 『進学コラム』

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進学コラム89「調査書の評定の取扱い方の改善とは」

Topicsで書いたように、2008年の公立高入試で、いくつかの変更(県では「改善」と言っていますが)があるようです。


詳細については、県教委のホームページを参照していただくとして、簡単にまとめてみると、

1 「調査書の評定」の取扱い方の変更。
調査書の評定に修正が加わり、従来のK1・K2をKひとつに統合。(5科と4科を分けずに、9科まとめて係数をかけることに。)

国語の試験で「放送による聞き取り検査」の新規実施。

の2点です。国語の聞き取り検査は、詳細がわからないと何とも言えませんが、現時点で、受験生に大きな影響がありそうなのは、調査書の修正のほうでしょう。


調査書の具体的な修正方法は、いたって単純で、
「個人評定合計値+95−中学校評定合計平均値」とのことですが、
もう少しわかりやすく式を書き直すと、
「個人評定合計値−(中学校評定合計平均値−95)」となり、要するに「中学校の評定合計平均が95点を超えた分だけ減点する」ということです。

この95点は、県が定めた評定合計の標準値で、一教科あたりの5段階評定「3.5」に相当(3.5×9教科×3年=94.5)します。これは、絶対評価が導入された、平成15年度の県内公立中学校の評定平均を基準にしているとのことです。


県では今回の変更について、「中学校の県全体の評定平均が年々高くなっており、かつ各中学校の評定平均値に幅がある。そこで、中学校における評価を尊重しつつ、中学校ごとの評定の平均値を、県が定める標準値にそろえることとし、調査書の評定を入学者選抜の資料としてより公平で適切に活用することとした。」と言っており、中学校によって評価基準がまちまちで、不公平感のあった内申点を、評定平均値を95点に揃えることで、不公平感を解消することが目的であるように思えます。

この文書によると、18年度の県内公立中学校全体の評定平均が3.59であるのに対し、最も評定平均が高い中学校は4.11、最も低い中学校は3.11だったそうです。
最も高い4.11の学校の評定合計平均値は、4.11×9科×3年=110.97(≒111)になりますから、この学校の生徒全員が111−95=16点も、内申点を失うことになります。
16点にもなると、合格最低点で、ほぼ1ランクの差(例えば薬園台と船橋東)に近い数字ですから、これは受験生にとって大きいでしょう。


例えば、県千葉高進学を目指し、勉強も実技教科も真面目に一所懸命取り組んで、3年間オール5を取り続け、「この生徒なら、どこの中学校でもオール5間違い無しだ。」と、先生も認めるような生徒でも、この中学校に在籍しているだけで、無条件で16点引かれてしまうのです。
内申点135点(3年間オール5)で、学力検査460点が合格点だった場合、この生徒が県千葉高に合格するためには、学力検査で476点以上(95.2点平均!)を、取らなければいけないわけです。これは、いくら優秀な生徒でも大変なことでしょう。
実際には、他校の生徒も大半が減点されるでしょうから、16点までの差は開かないでしょうが、これは新たな不公平を招くことは必至です。
特に、全員が受験する学校のうち、最も生徒の平均レベルが高いと思われる千葉大附属中では、相対評価時代に戻るくらいの大きな影響があるでしょう。同校からの県千葉高合格者は激減するかもしれません。(千葉高の付属中学ができて、優秀な生徒が持って行かれるでしょうし、まさに、踏んだり蹴ったりです。)


そもそも絶対評価とは、個々の生徒の到達度に応じて成績をつけるシステムですから、在籍する生徒が違えば、学校の平均も違って当然で、それを一定の数字に揃えることは、相対評価に戻すのと同じことでしょう。
中学校の先生からすれば、自身の判断で生徒1人1人につけた評価を、一律に切り捨てられるわけですから、到底、納得いかないでしょう。「中学校における評価を尊重しつつ」などと、よく言えたもんだと思います。


個人的には、今回の変更は、「不公平感の解消」よりも、「県全体の評定平均を下げる」ことが目的であるように思えてなりません。


今回の変更では、前述のように、生徒の努力に高い評定をつけても、一律に削られて、生徒にとっては、むしろ不利になってしまいます。それならば、初めから、評定合計平均を95に近づけるように評価した方が良いと、中学校側が考えてもおかしくありません。
元々、絶対評価には、はっきりとした評価基準がない(学校単位で内部規定はあると思いますが)わけですから、全体的に少し厳しめに評価を出すことで、生徒が受験で不利にならずにすむなら、そうするほうが自然でしょう。

結果的に、絶対評価導入以来続いていた、「大盤振る舞い」の評価はなくなり、ほとんどの中学校の評定合計平均値が、95点に限りなく近づくのではないかと予想できます。
千葉県は近隣の都県の中でも、突出して内申評価が甘い(大手塾の広告にも載っていたので、見た人も多いでしょう。)ので、横並び意識の高いお役所では、「千葉だけがこんなに甘くてはいけない」と思って当然です。
そこで、今回の変更というわけです。
ほとんどの中学校では、「評定合計平均値を95に近づけてくるだろう」と読んでの計画的犯行(別に犯罪ではありませんが)のように思えてなりません。
実際にどうなるのかは、1学期が終わってみなければわかりませんが、たぶん県全体では評定合計平均は下がることでしょう。


ただ、2008年の受験生(現中3生)の評定は、すでに中1・中2の2年分が確定してしまっています。この2年分は確実に削られてしまうのです。
さらに困ることには、中学校が評定合計平均を教えてくれない限り、自分たちが入試で何点削られるのかわからないことです。これでは、安心して志望校を決めることもできません。
兎にも角にも、今年の受験生は、県の安易な変更のために、昨年以上に不安な受験を迎えなくてはならなくなったことは間違いありません。
現中3生は、そういう状況に置かれていることを十分認識して、受験勉強に励むしかありません。また、中学校の先生に、できる限りの情報公開をしてもらえるように働きかけましょう。


ところで、この変更を逆手に取る方法がないわけではありません。
調査書の修正方法は、「個人評定合計値+95−中学校評定合計平均値」ですから、中学校の評定合計平均が95を下まわっていれば、「加点」されることになるわけです。
例えば、前出の評定合計平均が最も低い(3.11)中学校では、評定合計平均は3.11×9×3=83.97(≒84)になります。したがって、95−84=11点が、全員の内申点に加点されるわけです。(ということは、内申の最高点は135点ではなくなる?)
これを利用して、例えば、私立専願が決まった生徒の評定を、推薦基準ギリギリに切り詰めたりする(この技は中3生にしか使えませんが)などして、できる限り評定合計平均を下げるようにすれば、公立高受験者を有利にすることが可能になるでしょう。
相対評価の頃は、誰かの得点を上げると、別の誰かから削って来なくてはなりませんでしたが、絶対評価では、自由にできます。学校が意識的に成績を削れば、評定合計平均を下げることは難しくないでしょう。
ただし、生徒にとっては、自分たちのためとはいえ、自分の成績が削られるのではと、疑心暗鬼になりそうです。
まあ実際に中学校が、そこまで姑息な手段に走れるのかはわかりませんが、少なくとも、そういう裏技が使えてしまうような制度には、やはり問題があると思います。


千葉県の公立学校は上からの指示・指導に敏感ですから、もっと直接的に「評価が甘すぎるから、もっと厳しめにしなさい。」と言えば、素直に従うでしょう。次年度には、すぐに他都県と横並びになるはずです。
なぜ、こんな遠回しなことをするのでしょう。
それによって、また多くの受験生が困惑し、精神的苦痛を味わうことになるというのに。
県教委は生徒の方を向いていないことを改めて感じます。

今日、当選した県会議員に、このブログを見ている人がいたら、「生徒の方を向いた改善」を、訴えてもらいたいものです。

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